呼吸器内科
呼吸器内科
呼吸器内科は、上気道(鼻やのど)、下気道(気管や気管支)、肺などの病気や症状を専門的に診断・治療する科です。
上記のように、幅広く呼吸器疾患の診断と治療を行っています。
「風邪が長引いている」、「風邪は良くなったはずなのに咳が出る」、「毎年この時期になると咳がでる」といったように、なかなか咳が治まらないことってありますよね。長引く咳には何かの原因が隠れています。
その原因を正確に診断し、治療することで軽減すること(良くなること)があります。
以下の症状がある方は呼吸器疾患が隠れていることがあるため、呼吸器専門医への受診をお勧めします。
長引く咳で最も考えておかなければならない疾患が「気管支喘息」ですが、その他にアレルギー疾患である「せき喘息」や「アトピー咳」、慢性副鼻腔炎による「後鼻漏」、胃酸が食道に逆流する「逆流性食道炎」、循環器疾患である「心不全」、薬の副作用による「薬剤性」など様々な疾患が考えられます。
それぞれ治療法が異なるため、正確に診断することが大切であり、治療のための大事な一歩です。専門的な立場による診断が重要となります。
また、風邪が長引いていると思ったら、実は気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)と言うこともあります。
期間による分類 | 急性咳嗽(がいそう) | 遷延性咳嗽(がいそう) |
慢性咳嗽(がいそう) |
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持続期間 | 3週間以内 | 3週間〜8週間 | 8週間以上 |
咳の原因 | 感染性 | ⇔ | 非感染性 |
特徴 | 感染症(細菌やウイルス)が多い。感冒に伴うものや感冒後がいそう、細菌性肺炎などが鑑別に挙がる。 | 感染性の割合が減ってくるが百日咳やマイコプラズマは鑑別が必要。非感染性(アレルギー等)の割合が増えてくる。 | 非感染性(アレルギー等)の割合が増えてくる。数ヶ月以上続く咳の場合、副鼻腔炎を原因とする後鼻漏が原因のこともある。 |
期間による分類 | 急性がいそう | 持続期間 | 3週間以内 | 咳の原因 | 感染性 | 特徴 | 感染症(細菌やウイルス)が多い。感冒に伴うものや感冒後がいそう、細菌性肺炎、などが鑑別に挙がる。 |
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期間による分類 | 遷延性がいそう | 持続期間 | 3週間〜8週間 | 咳の原因 | 感染性⇔非感染性 | 特徴 | 感染性の割合が減ってくるが百日咳やマイコプラズマは鑑別が必要。非感染性(アレルギー等)の割合が増えてくる。 |
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期間による分類 | 慢性がいそう | 持続期間 | 8週間以上 | 咳の原因 | 非感染性 | 特徴 | 非感染性(アレルギー等)の割合が増えてくる。数ヶ月以上続く咳の場合、副鼻腔炎を原因とする後鼻漏が原因のこともある。 |
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気管支喘息は空気の通り道である気道に慢性の炎症が起き、可逆的に気管支がけいれん発作のように狭くなる病気です。空気の通りが悪いため、ぜーぜー、ヒューヒューと言う喘鳴を伴うのが特徴です。
気管支喘息は発作時以外には本人も喘鳴を自覚せず、咳や痰が長引くといった症状のみが続く場合もあり、診断が遅れることがあります。呼吸機能検査や呼気一酸化窒素(NO)の測定、好酸球測定により気管支喘息の程度を評価し、適切な治療を行うことができます。通常、発作が治まれば気管支も元に戻るため、症状は完全に消失しますが、軽症状であっても発作を繰り返していると、次第に気管支が細くなったままとなり、症状が完全に取れなくなります(気道のリモデリング)。早期に適切な治療を受け、健康な呼吸状態を維持しましょう。
COPDはたばこの煙や有害物質を長年吸い込み続けることにより、肺や気管支に慢性の炎症を起こし、酸素と二酸化炭素の「ガス交換」の効率が悪くなった病態で、「肺気腫」と「慢性気管支炎」があります。初期症状は乏しく、進行もゆっくり進むため、症状が進行してから発見されるケースがほとんどです。症状は労作時の息切れや咳、痰です。時に気管支喘息のような「ぜーぜー」や「ヒューヒュー」といった喘鳴を伴うこともあります。症状が進行してくると安静時でも息苦しさを感じるようになり、体重が減少しやせる(るい痩)といった症状がみられることもあります。
胸部レントゲンやCTで肺の状態を確認し、呼吸機能検査で息を吐く力を測定して診断します。
治療の基本は禁煙です。加えて、咳や痰、息切れに合わせ薬物療法を行います。進行すると呼吸リハビリテーションや在宅酸素療法(HOT)が必要になるケースもあります。
肺は外界と通じている臓器であり、空気中のホコリやチリなどの異物に加え、細菌やウイルスなどにも常にさらされています。病原体が気道に侵入・増殖して細菌やウイルスに感染し、気管支のさらに奥にある肺胞に炎症を引き起こす病気が肺炎です。一般的にのどの痛みや腫れ、鼻水、鼻づまり、咳、痰、発熱などの風邪と似た症状ですが、呼吸困難や呼吸不全へと重症化することもあるため注意が必要です。
発症原因により細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、非定型肺炎(マイコプラズマ肺炎など)などがありますが、細菌やウイルス以外にも誤嚥性肺炎や過敏性肺臓炎、好酸球性肺炎など細かく分類されます。最も多くみられるものが肺炎球菌による肺炎です。その他、最近猛威を振るっている新型コロナウイルスによる肺炎は呼吸不全に至りやすく他の肺炎に比べ致死率も高いので注意が必要です。また、免疫力の低下した状態では感染しやすく、糖尿病やステロイド内服中の方は注意が必要です。
胸部レントゲンやCTで肺炎の陰影が無いかを確認し、血液検査で炎症の程度を評価します。喀痰の細菌培養検査や抗体検査(血液検査)で原因となる細菌やウイルスを同定することができます。
治療は菌性肺炎の場合は抗菌薬の投与になります。抗菌薬の効かないウイルス性肺炎の場合は、発熱や咳、痰などを抑える対症療法も重要な治療となります。
睡眠は人生の1/3から1/4を占めており、その異常は健康に大きな障害をもたらします。
睡眠を充分とったつもりでも、日中に強い眠気に襲われるなどの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は成人男性の約3-7%、女性の約2-5%にみられます。睡眠中に平均して10秒以上続く呼吸停止(無呼吸あるいは低呼吸)が1時間に5回以上起こる状態をSASといいます。
主な症状は、睡眠時のいびきや中途覚醒、不眠、それに伴う日中の眠気が有名ですが、疲労感や頭痛といった症状もでます。さらには、睡眠の質が悪い状態が長く続くと、高血圧症や不整脈、心不全、脳卒中、糖尿病、脂質異常症、うつ病など一見関係ないだろうと思われるような様々な病気まで合併してきます。
検査は、まず簡易型検査装置によるスクリーニングを行います。睡眠時に鼻下と指に装着していただくだけで呼吸や血液の酸素の状態などを測定し、SASかどうかの診断をします。
治療法は、多くはCPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)になります。CPAPという小型の器械を寝る時に鼻に着けていただくだけです。最初は少し違和感があるかもしれませんが、睡眠の質が向上するため朝の目覚めが良くなり、「よく寝た!!!」という気持ちの良い目覚めで朝を迎えることができます。また、日中の眠気も少なくなり、快適な一日を過ごすことができるようになります。保険適用の検査、治療法であるあるため、安心して治療に取り組んでいただけると思います。
家族や友人から睡眠中の大きないびきや一時的な呼吸の停止などを指摘された場合は早めに呼吸器内科を受診し検査を受けましょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者は循環器病を合併しやすい
SAS患者の合併リスク(健常者と比べて) | |
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高血圧症 | 約2倍 |
狭心症・心筋梗塞 | 2~3倍 |
慢性心不全 | 約2倍 |
不整脈 | 2~4倍 |
脳卒中 | 約4倍 |
糖尿病 | 2~3倍 |
※現在、治療薬の供給停止により診療は中止しております。
喫煙は様々な疾患の原因となります。
禁煙は思い立った時が禁煙開始の時期です。
一人で悩まず、禁煙外来を受診し、禁煙に成功しよう。
それはたばこの中に含まれているニコチンが原因です。タールなどの有害物質もたくさん含まれていますが、喫煙をやめられなくしているのはニコチンであり、ニコチン中毒という病気の状態のせいです。2006年に禁煙治療がニコチン依存症の治療として保険適用になりました。
風邪をひいたら内科を受診するのと同じで、うまく禁煙ができなければ「禁煙外来」を受診してみましょう。治療は貼り薬や飲み薬があります。費用は1-2万円です。たばこ代に比べたらはるかに安いですよね。思い立ったが吉日、是非禁煙にチャレンジしましょう。
現在、2人に1人は癌になる時代です。特に肺がんは他のがんに比べ転移増殖が早いことと、特有の初期症状がないことから、進行肺がんとしての発見率が高く、発見された時には既に進行しており、治癒率が低いという特徴があります。統計的にも肺がんは年間12万人以上の方が新たに診断され、年間75000人以上の方が死亡しています(全がん死亡者数の第一位)。
肺がん発生の原因は全てが解明されているわけではありませんが、喫煙は大きなリスク因子です。中には「たばこを吸わなくても肺がんになる人がいるだろう」と屁理屈を言われる方もいます。しかし、肺がんになった方の多くは喫煙者です。また、非喫煙者でも肺がんになりますが、私の経験上、喫煙者の肺がんは非喫煙の肺がんに比べタチが悪く(進行が早い、転移しやすい、より早期がんでみつかる)、よくなる率も低いです。是非、気になった時、健康を考え始めた時、いつでも遅くはありません、禁煙にチャレンジしましょう。一人では難しいと思ったら、「禁煙外来」を活用してはいかがでしょうか?
肺がんの治療法は私の専門領域でもありますが、手術にしても、薬物療法にしても年々進歩しています。しかし、最も大切なのは肺がんになる確率を低下させる「禁煙」と早期発見である「健康診断」です。肺がんにならないことが一番ですが、もしなったとしても早期発見できれば肺がんであっても十分治癒(完全に良くなる)できます。胸部レントゲン写真で発見できる肺がんには限界があります。低線量CTによる肺がん検診を受け、早期発見に努めましょう。
当院では、呼吸器専門医・呼吸器外科専門医である院長がCTの読影をし、早期肺がんの発見に努めています。